悲劇の生態学者 可児藤吉のプロフィール
森下正明の2年先輩の可児藤吉は36歳の若さでサイパンにて戦死をする。一般財団法人京都大学名誉教授森下正明研究記念財団は平和への強い願いを込め このページを運営しています。 可児藤吉 (1908年1月1日 - 1944年7月18日)は、岡山県勝田郡勝間田町(現・勝田郡勝央町勝間田)に可児藤十郎の次男として生まれた。 1922年(大正11年)4月岡山県立津山中学校(現・岡山県立津山高等学校)に入学、1927年(昭和2年)に大阪府立浪速高等学校(現・大阪大学)理科乙類に進学、1930年(昭和5年)京都帝国大学農学部農林生物学科に入学した。 森下正明とは、同学部同学科で森下の2年先輩であった。 |
河川の蛇行と河床形態である瀬と淵に注目し、「河川形態型」を提唱した。また、昆虫が生息するそれぞれの環境を研究することで、今西錦司とともに現在の生態学基礎となる「棲み分け理論」を築いた。
1943年(昭和18年)10月、太平洋戦争のため、一兵卒として招集された。1944年(昭和19年)4月、和歌山市加太港より乗船し南方へ出征した。不二聖心女子中学・高等学校の
蒔苗博道教諭の研究では、可児藤吉は戦地に向かう前に、友人の牧野四子吉、文子夫妻の家に一泊する。その時、彼は「どこへ、どんな島へ行くのかしれないけれど、そこでまた何か
出来ることを勉強しよう、ノートと鉛筆だけはうんと持っていくのだ。」と語っている。牧野文子さんは、そんな可児藤吉のために、黒いラシャの布で、可児藤吉が用意した鉛筆30本を入れ
るための袋を作った。サイパンでは、1944年(昭和19年)6月には、日本軍は米軍に追い詰められていた。そして7月7日には日本軍は完全に追い詰められ斎藤中将は残存部隊約3,000名に総攻撃を命じ、陸海軍に
よる「バンザイ突撃」が行われた。「バンザイ突撃」と叫びながら突入する、まさに自殺行為であった。米軍は、この攻撃の情報を得ており、陣地を築いて待ち構えていた。この戦闘で
日本軍出撃部隊は、ほぼ全滅した。 翌日戦場は「死の谷」と呼ばれるほど、両軍の死体が累累と積み重なっていた。 可児藤吉が死亡と記録されたのは、1944年(昭和19年)7月18日
である。36歳という若さの生態学者の戦死である。 牧野文子さんは、1944年(昭和19年)10月19日に可児藤吉の墓参りをする。可児藤吉の墓には、白木の角棒に「故陸軍上等兵
可児藤吉の墓」とだけ書かれていた。軍国主義を憎んだ可児藤吉の肩書が陸軍上等兵とだけ書かれ、彼が研究員として所属していた京都大学の川村多実二動物学教室の名はどこにも記されていなかったのである。
森下正明らは先輩である可児藤吉の戦死を悼み、残された書類から論集の編纂に尽力をつくした。遺稿の整理には森下正明の他、宮地伝三郎氏、上野益三氏、今西錦司氏、牧野四子吉氏、若田久二雄氏、徳田御稔氏、渋谷寿夫氏、内田俊郎氏があたり、可児藤吉の
実兄の可児治雄氏、また後に岡山大学名誉教授の安江安宣氏、後に京都大学名誉教授の辻英夫氏の協力により可児藤吉の没後8年後、『木曾王瀧川昆蟲誌』が発表された。 この『木曾王瀧川昆蟲誌』を執筆した場所は、
今も京都大学大学院理学研究科「木曽生物学研究所」として運営をされてる。(『木曾王瀧川昆蟲誌』は、下記に全ページ掲載しています。)
可児藤吉 年譜
1908年(明治41年)1月1日 可児藤十郎の次男として岡山県勝田郡勝間田町(現・勝田郡勝央町)で出生
1920年(大正9年)3月 勝間田尋常高等小学校 尋常科卒業
1922年(大正11年)3月 勝間田尋常高等小学校 高等科卒業
1922年(大正11年)4月 岡山県立津山中学校(旧制)(現・岡山県立津山高等学校)入学
1927年(昭和2年) 3月 岡山県立津山中学校(旧制)(現・岡山県立津山高等学校)卒業
1927年(昭和2年) 4月 大阪府立浪速高等学校(旧制)(現・大阪大学)理科乙類 入学
1930年(昭和5年) 3月 大阪府立浪速高等学校(旧制)(現・大阪大学)理科乙類 卒業
1930年(昭和5年) 4月 京都帝国大学農学部農林生物学科(旧制)入学 指導教授:湯浅八郎 専攻:昆虫学
1933年(昭和8年) 3月 京都帝国大学農学部農林生物学科(旧制)卒業
卒業論文「ノミの触角の比較形態学的研究」
1933年(昭和8年) 4月 京都帝国大学農学部大学院(旧制)入学
1934年(昭和9年) 1月〜3月 福井県立武生中学(現・福井県立武生高校)臨時講師
1938年(昭和13年) 4月 京都帝国大学理学部大学院に転籍。動物学教室で同郷の 川村多実二教授の指導を受ける
1938年(昭和13年) 9月20日 臨時招集(岡山歩兵第10連隊)を受けるが、即日帰郷となる
1943年(昭和18年) 12月10日 陸軍二等兵可児藤吉臨時招集により中部軍司司令部(大阪)
中部防空集団(中部427部隊)機関砲第2大隊(大阪)第3中隊に編入
1944年(昭和19年) 3月15日 パラオ派遣第31軍第14師団歩兵第15連隊に追加編入
1944年(昭和19年) 4月 和歌山市加太町 重砲兵第5連隊より輸送船に乗船、南方前線へ
1944年(昭和19年) 5月4日 横浜寄港
1944年(昭和19年) 5月16日 サイパン島上陸
1944年(昭和19年) 6月10日 陸軍歩兵一等兵に昇進
1944年(昭和19年) 7月7日 サイパン島では、「バンザイ突撃」が決行される。
1944年(昭和19年) 7月18日 サイパン島のタポーチョ山付近の戦闘で、戦死と記録される (没年36歳)
没後
1945年10月13日 岡山県勝田郡勝間田町・可児家で葬儀執行
1952年3月 遺稿集「木曾王瀧川昆虫誌」を森下正明らが発行
1969年5月21日 第62回戦没者叙勲により叙賜 勲八等旭日白色桐葉章 勲記番号第1520695号
1977年秋 森下正明、岡山県勝田郡勝央町勝間田の正行寺、可児藤吉の墓地に参拝し
可児藤吉ゆかりの京都貴船川の清水を捧げる
1981年10月 水野信彦博士、川那部浩哉博士により「国際陸水学会誌」上において河川形態に関する
分類方式を世界に紹介
資料は、岡山大学名誉教授 京都大学博士(農学)安江安宣先生のまとめた資料を可児豊氏から提供を受けたものに基づいています。
一般財団法人京都大学名誉教授森下正明研究記念財団は、可児藤吉の死を悼み、強い平和への願いを込め、日章旗を公開します。(画像クリックで拡大します)
右上には森下の寄せ書き、京都大学名誉教授・木原均先生、京都大学名誉教授内田俊郎先生の寄せ書きもあります。(金沢大学名誉教授・大串龍一先生ご提供) |
戦時中に出征する可児藤吉に贈られた寄せ書きの記された日章旗 |
木曾王瀧川昆蟲誌: 渓流昆蟲の生態學的研究 可兒藤吉 遺稿
著者 可兒藤吉 森下正明編集 木曾教育会 1952年3月5日発行 (非売品)◇ PDFにて閲覧
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可児藤吉全集 全一巻 思索社 1978年1月25日発行 ASIN: B000J8RR5O
01. 渓流棲昆虫の生態
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02. 加茂川におけるブユの分布
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03. 流水における動物の生活状態
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04. 王滝川の動物生態学的研究?
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05. 王滝川の動物生態学的研究?
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06. 堰堤工事の水棲動物に及ぼす影響
◇ その1 PDFにて閲覧 ◇ その2 PDFにて閲覧 ※ファイルサイズの関係上2つに分割しています。
07. 晩春の川にて
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08. マユタテアカネの交尾産卵寸描
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09. 下水溝の生態
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10. 満州産泥虫科大蚊科蚋科の幼虫
◇ その1 PDFにて閲覧 ◇ その2 PDFにて閲覧 ※ファイルサイズの関係上2つに分割しています。
11. ノミの触覚について
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12. ノミの触覚について 図版
◇ その1 PDFにて閲覧 ◇ その2 PDFにて閲覧 ※ファイルサイズの関係上2つに分割しています。
13. 食性の研究二、三
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14. 生態学ノート
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15. 加茂川水系産ブユ科11種の蛹について
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16. 小さな昆虫記
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17. 「生存競争」の問題(G.F.Gause 可児訳)
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18. 加茂川の水温同時観測の記録
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昆蟲 日本生物誌(昆蟲上巻) 研究社 1944年3月5日発行 日本出版會發行承認い300536號
溪流棲昆蟲の生態 (1944年)
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その他
不二聖心女子学院中学校・高等学校 読書会資料 教諭 蒔苗博道先生 提供
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◇不二聖心女子学院中学校・高等学校での可児藤吉の紹介
朝日岳
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京都大学総合博物館ニュースレター 今西・可児らの収集標本発見
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可児藤吉 スケッチ (可児藤吉全集より)
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